ゲストさま、みんげい おくむらへようこそ!

みんげい おくむら トップページ > 窯名や作家名で器を選ぶ > 古村其飯(荒焼・沖縄) > 古村其飯さんのうつわの色(読み物)


古村其飯




土の色・土の記憶



僕は料理の時にあまり繊細に盛り付けをする方じゃない。
なので皿の表情はほとんどが偶然。


それでも、時折ハッとするような色や風景に出会うことがある。
古村さんのうつわはそんな瞬間が多くやってくる気がする。



古村其飯


これは作り手の古村さんのところで頂いたお昼ご飯。
古村さんもこの「重たい皿」にざざっと盛り付けただけなのだけど、
どうだろうこの表情は。


完熟シークワーサーは黄金(くがに)と呼ばれる。
豚肉、豆、ヨーグルトソース(古村さんの発酵甕仕込み)とハーブ。
そこに黄金をあしらって。

なんだろう。
もう、この一皿でいい。
完璧なのだ。

この景色。



古村其飯さんの焼き物は土だけで出来ている、いわゆる焼き締めで、
原料の土はそれだけで見るとどれも同じ色をしているのだが、
焼き上がってくると表情は千差万別。


そもそも古村さんが使う土は地元のもので、
珊瑚の風化土や泥灰の風化土なので、
それぞれが長い歴史を持っている。

成形され、炎が当たることで、
その記憶が呼び覚まされたのか、あるいは全く新しい表情なのかは窺い知ることはできないが。



古村其飯


2020年の窯出しより発酵甕。
意図的に窯の中の温度が低いところに入れられたため、赤みを帯びている。

やや低温であれば、赤っぽく、柔らかい発色になる。



古村其飯


一方、抹茶碗は高温で、
薪の灰を被ったりする場所に意図的に置かれるため、
その表情は多彩。


文字通り多彩で、
土と火の力を最大限感じられるものとなる。


奥の抹茶碗はテカりが強い。
これは灰が溶けてガラス質になったもので、
偶然の産物だ。


手前も硬く焼き締まった肌の具合。
全体のハードな表情に比べ、「コ」の字が妙に愛らしい。
(余談だがこれを持っているのは古村さん本人。ものづくりの人の手の美しさよ。)




このページのトップの写真を改めて見てもらいたい。
まるで絵画のような表情のもの。
直しによって稲妻のような表情が入ったもの。
割れてなお表情豊かになったもの。


古村さんのうつわにはどれもそれぞれの色、そして景色がある。


景色同士を組み合わせるのもまた楽し。
素材が景色に溶け込むように馴染むのもまた美し。


良き食事の良き共になれば。




(本ページの撮影:松浦麻耶)