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やちむん まさひろ工房 窯出し


沖縄 まさひろ工房の窯焚き 2013年秋



ある時、沖縄のまさひろ工房の仲村まさひろさんを尋ねた時、
「次の窯焚き、手伝ってみる?」と言われまして、
どうせお取り引きを始めるのなら、窯焚きか窯出しを見に来ようとは思っていたので、
「是非!」と答えました。


しかし、買付けだけの僕が果たして窯焚きの手伝いなど務まるのだろうか。
と実は前日かなり緊張しまして、あまり眠れませんでした。



9/28(土)朝。宿泊地のコザからバスに乗り込み窯へ。

着いたら買い物と近くの寺(金武観音寺)へお参りに。上手に焼けるよう祈願。


朝9時。窯に火が入ります。
窯の上には塩と米。泡盛をおちょこに注ぎ、火に投げ入れ、火の神様に祈ります。
そして仲村さんがいよいよ着火。

今回の窯焚きは基本的には仲村さんと僕。そしてところどころ助っ人が登場。
仲村さんが修行した読谷の北窯のようにある程度の人数で、それも交代しながらやる体制ではありません。


やちむん まさひろ工房 窯出し


ここから24時間弱かけて焚き口と呼ばれる窯の一番前の部分を焚き、
窯全体を暖めていきます。(この焚き口には器は入っていません。)


大きめの薪を二人で交互に入れていきます。
最初はちょろちょろだった火が段々大きくなりますが、最初はまだとても地味。

そして火の周りだけが暑い。





昼過ぎまではまだのんびりペース。
おにぎりや、見学に来た知り合いの方の差し入れなんかを食べて、おしゃべりして、ラジオが流れて、のんびりのんびり。


やちむん まさひろ工房 窯出し


とはいえここは沖縄。
日中は30度近いですし、薪を持って運んで、窯に入れて、という作業を繰り返しているとまぁ暑い。
そして灰やらなんやらが汗かいたところにくっつくので首あたりはもうザラっざら。
子供の頃公園で遊んで帰った時のあの感じですね。

火はやはり暑いですし、火の粉が飛んだりしますので、
長袖、長ズボン、そして分厚い革靴着用です。頭にはタオル。


焚き口には徐々に燠(おき)が溜まりはじめていきます。薪の残りですね。これは。
まだまだ燃える赤い状態のもの。
これをガッツリと溜めていきながら、徐々に窯の温度が上がっていきます。


夕方頃には器の入っている上の袋の方にも温度が伝わり始めてきて、窯全体が熱くなってきます。


それでもまだ作業はのんびりしたもので、二人で窯の正面、少し離れたところに座り、
おしゃべりしながらタイミングを見て、薪を入れにいきます。




窯焚きの長い夜 一夜目。



夜がやってきます。


やちむん まさひろ工房 窯出し


夜遅くになってくると若干の眠気が襲ってきます。
そして上の袋も中が赤くなってきて、しっかりと熱が上がってきているのがわかります。


窯場にはひたすらラジオが流れていて、いつもは聞かない沖縄のローカル番組だったり、
眠いけど、結構楽しいもんです。


夜の炎はとりわけ美しいし、情熱的でもあり、官能的でもあり。


やちむん まさひろ工房 窯出し



25時か、26時か。
眠気がMAXに。ちょっと窯の側で横になります。
ぐーぐー。1時間弱仮眠させてもらって大分すっきり。


沖縄は日没が18:45頃で、日の出が6:30過ぎだったので、真っ暗の時間はかなり長いです。


28, 29時くらいにちょうどラジオが朝の番組に切り替わります。
ラジオの向こうの声もしっとりとした感じからちょっと活気が出てきて。


その頃には焚き口は燠が相当溜まってきて真っ赤です。




窯焚き二日目。 いよいよ袋へ。



朝6時、1番目の袋を焚く担当の某窯のお弟子さんがお手伝いで来られました。
別の窯に属しているのですが、勉強のため、と。


3人になったので、2人で超えた夜中よりも若干会話も弾み、楽しくなります。



朝9時、焚き口は24時間。
他の窯よりも結構長いらしいですが、焚き口は焚き終わり。

いよいよ器が入っている袋を焚いていきます。



1番の袋へ。
ここは窯の親方と助っ人の方がメインで焚くので僕は細かい手伝い。

10時、再び眠気に襲われ、ちょっと仮眠。


12時、少し窯から目を離しても助っ人さんがいるので
お湯沸かしてカップの沖縄ソバやら、差し入れやらで昼食。


もうスタートして30時間弱経っているのにトイレに一回しか行っていない。
相当な量麦茶やらポカリやら飲んでいるのに、全部汗になってしまったのか。

熱中症には気をつけなければ。


慣れた人でも熱中症になるので注意。
これは北窯なんかで見かけてることなので素人の僕はなおさら。



やちむん まさひろ工房 窯出し


器の入っている袋は、窯の正面から見ると、左右に穴が開いていて、そこから薪を投げ入れます。
器に当てないように、壁に当たって跳ね返って器に当たらないように、注意して、注意して。



当初の予定では、1番目の袋は4時間。つまり、午後1時終了予定。

でしたが、、、この日はこれがズレ込みます。


3時間経って、テストピースと呼ばれるようじツボを取り出すのですが、
釉薬の溶け、色味などをチェックしてみると、まだまだ。とのこと。

1時、2時、3時、4時、5時。


結局プラス4時間。17時に1番目の袋が終了でした。


お手伝いの方が13時に帰り、その後は僕とまた別の
二番目の袋を焚く予定の助っ人の方が焚きました。



どうにかこうにか1袋目を終え、次の2袋目へ。


これは当初の予定5時間です。単純に考えたら22時終了予定。




窯焚きの長い夜 二夜目。終わりの無い夜。



第二の助っ人さんは21時までしかできないので、僕は21時前まではちょっとのんびりめで手伝います。


ひたすらの単純作業。
親方はもちろん火の具合、器の具合、色々と目を配っていますが、
僕ら素人は薪を入れ、離れて休み、また薪を入れ、の繰り返し。


やちむん まさひろ工房 窯出し



18時まで盛り上がっていた相撲の千秋楽も終わり、
ラジオも正直パッとしない番組が続きます。(これ、意外と辛い。)



21時が過ぎ、ここからはまた親方とひたすら二人です。
正直、もう会話のネタもそんなに浮かばないし、眠いし、過酷な時間に突入でした。


22時、順調にいけば2袋目が終わるところですが、こちらも順調には進まず、そのまま続行です。


僕は人生にそうは訪れない窯焚きなんて機会なので、予定通り終わらないのは体力的にはキツいけど、
こうなったら徹底的に楽しんでやろう、と決意。


この時点で、前日土曜日の朝9時からカウントすると、37時間目。




そして本来のスケジュールでは21時に窯焚き終了。
でちょっと酒飲んで解散!というスケジュールでした。

しかし無情にも作業はまだまだ続きます。


やちむん まさひろ工房 窯出し



22時。今酒飲んだら美味しいだろうなぁ、でもたぶん2分で寝る。
などといらぬ妄想が始まります。


23時。あと1時間で月曜日だ。月曜日は何する予定だったかなぁ。などと。


24時。9/30になったなぁ。もう窯焚き始まって40時間に近づいたなぁ。と。




この頃、親方に異変が起きます。「にーぶい」です。
沖縄の言葉で居眠り。



「にーぶい、きたね。」と言いながら眠い目をこすります。
前日の夜もそんな時間があったのですが、明らかに今回はにーぶいを止めようとする力よりも眠りの力が勝っています。



24:30くらいだったでしょうか、
6、7分おきに薪を投げ入れるのですが、投げ終わるとその場を離れ、ベンチへ行き、親方が横になる。
で、そろそろかな、というタイミングで僕が起こす。という状態が始まりました。


僕まで「にーぶい」来ちゃったらヤバいので、その辺をフラフラしたり、
奇麗な星をみたり、ジュース飲んだり、いろいろしてみました。



その状態が26時近くまで続きます。


26時、1時間おきのテストピースを取り出します。「もう少しだね。」と。
結局2番目の袋が終わったのは26:30過ぎでした。




もう二人とも限界。
僕はとにかく靴を脱ぎ去りたい、シャワーしたい、寝たい。そんな感じ。




でも、まだ3袋目があります。
3袋目は横幅がそれまでの袋に比べ狭く、薪を投げ入れるのは1カ所だけ。
基本親方にお任せになるんですが、もう二人とも満身創痍。

薪は当初の予定を遥かにオーバーして使っていますから、事前準備のものを使い果たし、
ちょっと離れた場所からリヤカーで暗闇の中薪を担ぎ上げ、取って来なければなりません。


そんな作業をしながら、僕が一度力つきます。


窯の外、路上に崩れ落ちます。
もう起きていられませんでした。星が奇麗でした。月も。



たまにハッとして、親方は?と思って見ると、薪投入口の近くでにーぶいしています。
ヤバい。


「火、大丈夫ですか??」と声を掛けます。
にぶい反応ですが、「大丈夫」と。


27時台、後日見ると最後に写真を撮ったのがこの時間ですが、何が撮りたかったのか全然わかりません。
寝ぼけていたのでしょう。


28時、つまり朝5時。夜が白んできます。
予定ならこの辺で終わりなのですが、温度がイマイチ上がり切らずまだ続行となります。


もうこの辺は意識と無意識の狭間で、何が現実だったか、何が夢だったかほとんど覚えていません。
座れば寝ちゃうし、立ち上がれば足がもつれるし。。。



29時、朝6時です。まだもう少し火を入れる、という親方。


ここで僕はタイムアップ。
親方を残し、僕は去りました。



45時間の死闘。
帰って力なくシャワーを浴び、布団に崩れ落ちました。
窯焚きって、凄いです。




四日間の冷まし。そして、運命の窯出し。



土日と月曜日の朝までかかった窯焚き。
月、火、水、木、と窯を自然に冷まして、金曜日。いよいよ窯出しです。


やちむん まさひろ工房 窯出し


窯は焚き終わると、薪を放り込む穴も粘土で塞がれています。
窯の入り口の粘土とレンガを取り除く作業から始まります。
粘土はそこらへんに捨てるのですが、レンガはまた何度も使いますので、レンガを割らないように、
トンカチなんかを使って徐々に窯の入り口を開けていきます。

少しずつ窯の中が見えてきて、ドキドキする瞬間です。

同時に、窯の中はまだ少し温度が高いので、もわんとした熱気が外に出てきます。


ここの窯は今回は3つの部屋を焚いていますので、3つ分まず入り口を開きます。
窯の中にクリップライトを入れて、いよいよ全貌が見えてきます。


やちむん まさひろ工房 窯出し



温度が上がらなかったり、あと一歩のところでなかなかうまくいかなかったり、
窯焚き終了時点からかなり厳しかった、と聞かされていましたが、確かにその通りで、
正直なところ、「あ、これはちょっと売るのは難しいかも」というものもかなりあります。

僕のその気持ち以前に、親方がしょんぼり気味です。



この2日前、照屋窯の照屋佳信さんところで照屋さんと話をしていた時、
「窯焚きがうまくいかないと、もう開けるのも嫌なんだ。」「そういう時は本当にキツい。」
と聞いていたので、どうしたら良いやら。



土作り、釉薬作り、ろくろ挽き、乾燥、、、
色んな行程を全部一人でやってきて、時間をかけて準備して、時間をかけて窯焚きしたのに、
それでも上手くはいかないものは上手くいかない。


本当に厳しい現実です。




窯に入って、あれこれチェックして、そこから器などを取り出して、工房まで運びます。

ひたすら運びます。
途中お昼を挟んで、また運びます。


2時くらいには全部出したでしょうか。
そこから、僕は1つ1つ重なった器を外していきます。
自然に離れているものもあるんですが、まだ蛇の目のところ(マカイやお皿の輪っかのところ)
にぴったり器同士がくっついたりしているのでそれを道具を使って外していきます。


外しながら、うちで仕入れさせてもらうものを選びます。
やはり思ったほど量は取れなかったのだけど、それでも今回の窯の中で焼きの良いものはしっかり頂いてきました。


次は、器の高台(底の部分)をやすりで削ります。
そうしないとガタガタしたり、ごつごつしてテーブルを傷つけてしまったりするから。
今回買付け分はほぼ僕自身が削りました。


そうこうして夕方に作業は終了。
全部の器のこすりまでは終わらなかったけど、これにて一旦窯出しも終了。


まさひろ工房、窯焚き窯出し。貴重な経験をさせて頂きました。




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