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ベトナム北部

2011年・2012年ベトナム北部 少数民族を巡る旅5



旅はベトナム、ラオカイ省。
藍染め大好きな僕が最も興奮する、藍染めの衣装が美しい黒モン族が多く住む土地へ。


黒モン族はその名の通り「黒」い衣装なのだが、これは藍染めを繰りかえし、
黒っぽくなった麻布を用いている。
麻布で作られた上着、スカート、そして脚絆。これが黒モン族の女性の衣装の基本。
スカートにはろうけつ染めで細かな、細かな模様を施していく。
上着は袖や首に刺繍を施すのが伝統的。

これらの麻布はまず麻を育て、農作業の傍らそれを手で紡ぎ、そして織る。
織った布を藍で染め、衣装に仕立てる。
モン族の女性は伝統的に染めや織り、そして刺繍、これらが当たり前に出来て一人前。
と言われている。


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写真左:シンプルな衣装のお婆さん。シルバーの大きなピアスもモン族の特徴。
古いピアス、ネックレス、バングルなどは美しいものが特に多い。
写真右:竹の背負いかごも皆が持つ生活道具。右側に垂れているのが麻の繊維。
これを歩きながら、あるいはどこかに座って、紡いで糸を作る。



余談だが、昔はほぼ無かった異なる少数民族間の結婚も最近は増えつつあり、
黒モン族の男性に嫁いだ異民族の女性は、まず男性の母親に刺繍などを習う。
それが一人前に出来るようになるまでは家族ときちんと認めてもらえないんだそう。
他の家事一切よりもまずはこれ。
そのくらい大切にされている女性の仕事です。



黒モン族の藍染め布が出来るまで。



既に上で説明していますが、かつて黒モン族の民族衣装は
全ての原料が自分達の身の回りから取れたものでした。

しかし、現在は刺繍に使う糸が隣国から来る化学染料のものであったり(当然手紡ぎではない)、
ろうけつ染めのスカートがろうけつ染め風のプリントであったり、
かなりこの民族衣装も姿を変えつつある、と言えます。


しかし、中にはまだ力強い仕事をしている人もいて、そんな人達のいる風景です。

まずは糸。
麻の繊維をしごいて、それをよっていきます。


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この作業は本当に移動中にやっている人が多くてびっくりします。
背負いかごに野菜をいっぱい詰めて、畑からの帰りに。
写真下の人のように、市場に買い物に来ながら。
あるいは女性同士でおしゃべりをしながら。


写真上の女性の手、彼女は爪の回りが青く、しっかりと藍染めをしている手。



こうして作られていく糸が糸巻きをされて、織られていきます。
織られた布は染められるか、蜜蝋でろうけつが施され、その後藍染めされます。


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写真左上:黒モン族の織物は細幅で基本30cm弱の幅です。
写真下:ろうけつ染めが施されているのがわかるでしょうか。細密に。


僕らが気の遠くなるような、そしてどれもが専門職たりうるようなこんな仕事を、
1人がイチから最後までやっているというのが、どんなにか凄いことか。
(最近では分業したりもしているようですが。)


人の手の、そして人の営みの尊さを感じます。

これを見るにつけ、僕は黒モン族の生活の虜になりました。



黒モン族の暮らしの風景



写真を見てもわかるよう、少しずつ民族衣装はプリントの質の悪いものが増えています。
麻布づくりをしなくても良い、という風潮が更に広まれば、美しい麻布はたちまち消えてしまいます。


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しかしそんな今でも尚、モン族は平地を嫌い、山に残り、
そして自給自足をしている。力強い生活を持つ民です。


これからどんな風に変化していくものなのか。
定期的に訪れたいと思っています。



黒モン族と飲み会



ラオカイ省のサパ(Sapa)で仲良くなった黒モン族の人達と、
サパでご飯に行くことになりました。

串焼きとお鍋のお店で飲み会。
通常、女性はお祝い事などが無いとあまりお酒を飲まないそうですが、
この日は僕に会ったお祝いだと(ちょっと強引?)お酒を飲む。
ペットボトルに入った焼酎を小さなおちょこで一気、また一気。
とにかく強い。


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左の女性は乳飲み子を連れて、でしたが。
酒飲みながらおっぱいをあげているその姿は壮観。(子供、酔わないのか?)

この焼酎は何かの果実の味が付いたちょっと甘いものだったけど、
飲み口が軽いからか、3人で2本空けるともう足元がおぼつかない…。
(その日はどうにか宿まで歩いて帰りました。)


そして、飲んだ席で翌日はこの二人のうちの一人(左側の人)の家がある近郊の村へ行く事に。


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サパからオートバイで数十分。
道路から山道に入り、また数十分。
そうして村へ。

村へ向かう途中も、藍染めの原料となる琉球藍(かその仲間:キツネノマゴ科)が育てられていた。


迎えられたのは、昨日飲んだ人の弟夫婦の家。
そこに親戚などが集まってきて、お昼の宴会。

この家も、その隣の家も、この日に藍染めをしたばかりの布が外にたっぷり干されていた。


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家は木造、高床ではなく土間にそのまま暮らしている感じ。
背の低い椅子と背の低いテーブルが置いてあり、
食事の準備は直火。
その日の朝、さばいてくれたという豚がメインです。
部位毎に茹でたり、炒めたりシンプル極まりない調理。


そして子供が多い。
大人が10名ほどに対し、子供が6,7人。


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客人が来た、ということでまぁみんな飲む、飲む。
この日は米焼酎をおちょこでたっぷりと。

昼から泥酔しました。

とても楽しかったけど、気付いたらもう宿のベッドにいた。
カメラを見ると、帰りもいくつか写真を撮っているのだけど、
正直全く記憶が無い。。。


とはいえ、まさかこうして黒モン族の人達とこんな形で飲みかわすとは 思いもしなかったのでとても良い経験になったのでした。


次はサパ近郊の人々や暮らし、そしてお勧めの宿。



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