みんげい おくむら トップページ > 民藝に関する読み物 > 奄美大島の泥染め
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奄美大島の泥染め まずは島のこと。
1996年以来、久々に訪れた奄美大島は2泊3日の間ずっと雨。
そのことが嫌だったかと言うと、実はそうでもない。
緑が豊かな島は雨の日にこそ美しい。
改めてそんなことが体感出来たから。
久々に訪れた奄美大島。鹿児島でありながら琉球的でもあり、何とも不思議な島。
鹿児島の離島というと、屋久島あたりと比べてしまいそうだけど、こちらは高い山は無く、
平坦とは言えないけど、それほど高低差がない。
緑は豊富だし海も綺麗だけど、自然遺産という意味では屋久島に分がありそうな気がします。
島の名産である黒糖焼酎をたっぷり頂いた夜に、
屋根を打つ雨音をぼんやりと聞きながら(それは素晴らしいBGM)、その日に聞いた色んな島の話を思い出す。
この島は歴史的に鹿児島と沖縄を行ったり来たりしたから、
暮らしの中にどちらの文化も混在しているようなところもあるし、島独自の文化もある。
また、奄美大島はキリスト教の歴史も長く、カトリックの教会が島北部には沢山見られる。
車を走らせ、どこかで島の人の話を聞けば、この島が如何に豊かな文化を持つか、すぐに感じられる。
しかもそれは行きにくさ故か、沖縄と違い、今もある程度島に深く根付いている。
上:ソテツなどの緑に食べられてしまいそうな建物。下左:集落にある教会。それぞれ小さく、しかし美しい。下右:黒糖を作る。まろやかで旨い。
大島紬と泥染
奄美大島の工芸と言えば「大島紬(おおしまつむぎ)」。
柳宗悦「手仕事の日本」によれば、「しかし更になお鹿児島県のものとして特筆されてよいのは「大島紬」であります。
(中略)仕事は盛(さかん)で島を訪うと筬(おさ)の音をほとんど戸毎に聞くでありましょう。
特色ある織物としてこの島にとっては大切な仕事であります。」
とあります。
現在はそれほど多くの家で織られているわけではありません。
ピーク時に比べると数十分の一の規模になってしまっているとのことですが、
出来上がりに半年から1年を要すると言われるこの大島紬は島内で分業によって作られています。
大島紬と言えば、その美しい「黒」。
この黒が泥染めによって染め上がります。
後述しますが、茶褐色に染まった糸が、徐々に黒になっていくその過程は、
この島の自然と人間の手の力が組み合わさった奇跡のような時間です。
しかし、絹織物で、
昔は養蚕から島でされていたけれど、今は他所からの原料を染め、
手間を掛け、生み出される大島紬そのものは非常に高価です。
高価な理由もわかり、納得ができますが、
日常生活に持ち込むにはちょっと難しい。
そんなこの島で、大島紬の泥染をやり続けながらも、
新しいことに挑戦する工房がある、ということを知り、訪ねることになりました。
金井工芸の泥染め
奄美大島の中心である名瀬市に隣接した龍郷町にある「金井工芸」。
空港からなら、30,40分ほど、か。
大きな道から横道に入り、ちょっとすると小さな集落があり、
その集落の中に金井工芸はあります。
その日はちょうど、幸運にも一通りの作業が見られる日でした。
金井工芸は現社長と息子の金井志人さん、それに数名の職人さんからなる、
人数から言えば小規模な工房。
高校卒業し、上京して学び、遊んだ金井さん(写真左)と、
金井さんのその頃からの友人で、何と偶然にも私(奥村)の高校の同級生と友人であり、
数年前に奄美に移り住み、金井さんの元で染めをする川島さん(写真右)が様々な話を聞かせてくれました。
泥染めが面白いのは、まず泥だけではあの色には染まらない、ということ。
おそらく、多くの人がこのスタート地点で「えっ?」と思うはず。
この可愛らしい花を持つ、車輪梅(テーチ木)の樹木砕いて煮出したものを使って染めをする。
これ自体が少しピンクがかった赤褐色となり、美しい染めになる。
車輪梅を煮出す作業中。一回に600kgもの車輪梅を煮出す。
染めの作業をしながら、大釜でこの車輪梅が炊かれる姿は実に壮観です。
車輪梅を煮出した赤褐色の液体を使って、まずは染めをします。
毎日染めが繰り返される工房の床は車輪梅の染めの色そのもの。
この姿がもう十分に美しく、ワクワクするもの。
そして、この車輪梅で染められたものが、次に泥で染められます。
工房裏手にある泥田で染めるのです。
悪い言い方をすれば大きな水たまりみたいなところ。
金井さんが泥を見せてくれました。車輪梅で染められたもののタンニンと、
泥の中の鉄分が反応し、赤褐色から黒へと変化していきます。
しかし、当然一回で終わる訳はなく、
大島紬の黒を出すためには100回近く染められるものもあるそう。
(車輪梅と泥の染めを繰り返しますからこれは気が遠くなる。)
泥田で染めを繰り返すと、泥田の鉄分が減っていきます。
そんな時には「蘇鉄(ソテツ)」の実を投げ入れておくと、鉄分が戻るのだとか。
「鉄が蘇る」と書いて「蘇鉄」。本当にびっくりします。先人の知恵。
染めを繰り返すためには、一度染められたものを洗う必要があります。
洗うのは山の方の川だそうです。
全て天然のもので染められている訳ですから、川で洗おうと問題は無い。
いや、そんなの素晴らしいじゃないですか。
奄美の泥染めは島そのもの。
以前、私奥村はTRANSIT誌に「島を焼く」というタイトルで沖縄の焼き物のことを寄稿しましたが、
こちらはさしずめ「島を染める」。ということでしょう。まさに。
藍染めもあります、金井工芸
金井工芸が面白いのは、沖縄から持ち込んだ琉球藍で藍染めもやっているし、
フクギを使った染めや、その他天然染めも積極的に取り組んでいます。
大島紬の一分業の工房、というより、
大島紬を一つの核としながら、その高い技術や信頼で、幅をどんどんと広げている感じがします。
藍染めも「ちょっとやっている」レベルではないのは感じてもらえるはず。
染め、織りは工芸の中でも、今職人さん達が仕事を続けていくのが難しいジャンル。
金井さんのところはそんな中、ぐんぐんと仕事の幅を増やしている感じがするし、
それが悪いことじゃなくて、高い技術と、単純にまだまだやりたいことがある。
そんな前向きな雰囲気を感じる素晴らしいものです。
Suno & Morrisonと金井工芸
2016年から始まったSuno&Morrisonの奄美の泥染めと藍染めのシリーズ。
実は、2015年の訪問時に染めが始まっていました。
ようやくお披露目になりましたが、Suno&Morrisonの齋藤さんは、奄美金井工芸との出会いが無かったら、
今のSuno&Morrisonは無かっただろう、と話していました。
前職を退社し奄美を旅した齋藤さんが出会った金井工芸、そしてそこで染めた糸で作り始めた自分のものづくり。
Suno&Morrisonのスタートは金井さんのところで染めた糸だったのです。
今回のストールは泥染めは30回の染めだそう。
黒まで染めるよりも、より泥らしい色。
これは今の時代の気分かもしれませんが、この色、個人的にもとても気に入っています。
偶然の出会いから5年の月日が流れ、また齋藤さんと金井さんが組みました。
当店でも金井工芸の染めを、Suno&Morrisonというフィルターを通してお届け出来ることをとても嬉しく思います。
そして、金井工芸の皆さん(特に金井さん川島さん)お世話になりました。
その後も鹿児島市のイベントashなどで金井さんに会ったり、個人的にも縁が続いています。
Suno&Morrisonだけでなく、これからも金井さんの泥染めを、藍染めを、天然染めを紹介していきたいところです。
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