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髭男


髭男はどこへ。




春でもハノイは暑かった。
30度を超えるハノイに一週間近く滞在した後、

高速道路が出来て、寝台列車を使う必要が無くなった北部のサパ行きのバスに乗り込んだ。
旅情は寝台列車だが、
時間も金も節約できるバスのありがたさには敵わない。
(しかしクーラーがキツい。)


2015年、サパは開発の真っ只中だった。
町の中心部にあった市場が1kgほど移動し、
それに合わせたように、中心部からそちらへの道路や周辺が整備されていた。


髭男


ベトナムの旅のことはもう少し東側のハザン省のことも是非読んでもらいたい。


訪れる度に買うものが少なくなってきていたベトナム北部。
この時も買えるものが少なかった。

少し気落ちしながらも、
ハノイに比べれば天国のようなサパの気候に癒され、
街歩きを続けていた。


髭男


髭男


黒モン族はまだ老いも若きも女性たちが民族衣装を身につけている。
(若い人たちの着用率は目に見えて減ってきているが。)


何か無いかな、と旧市場の周辺の裏道を歩き回っていたら、
気になる店があった。


髭男


見るからに怪しい男が、バナナを触っていた。

どうやらオーガニック食材を売っている店のようだが、

髭男


店内にあるカゴや布がどれも良いもので、
ちょっと驚いてしまった。

髭男


そもそも、この町でオーガニック食材という需要はあるのだろうか。
誰向けなのか。


話しかけると、道具類も一応売ってくれるというが値段がなかなか高い。

いったん考えようと、赤ザオ族の料理が食べられる食堂に向かった。
昼食後、やはり気になる。


戻って、デザートがてらに果物の盛り合わせを彼に頼んでみた。
そういった簡単なものがその場で食べられたのだ。


髭男


髭男


出された皿は見事だった。

選ばれた果物は見事に食べごろで、
抜群にうまい。
特にパパイヤは今まで食べた中で一番美味しかったかもしれない。


この男、相当怪しいが、実は信頼できるかもしれない。

そう思いながら、昼食を食べながら実は買う気満々になっていたものを結局買った。


竹かごと、


髭男


髭男


葛の繊維で編まれたバッグだ。
(もともとは川で魚を獲る網に使われるものをバッグに転用したもの。)


髭男



竹かごは、この形を他所で見たことが無かったし、造形が良い。

葛のバッグはラオスやベトナムの他の地域でも目にしていたが、
今まで見た中で一番作りが細かく、上質だった。


これらは両方とも今も私物として、日々に役立っている。
本当に良い買い物をした。



ところが、2017年にサパを訪れると、
この店は無くなっていた。

まあ続くとも思えなかったが、
彼に道具の買い付け代行をしてもらいたいぐらいだった。

今どこで何をしているのだろうか。
怪しい髭男さん。



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