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消えた豆乳


消えた豆乳


中国旅の面白さの一つに朝ご飯がある。
もともと朝は早起きをしたいタイプだが、
中国にいるとその気持ちがもっと高まる。

朝食が豊かなのだ。
街を歩けば、すぐに湯気が立ち上る場所が見つかるはず。
そんな店は朝だけ、あるいは朝から昼だけぐらいのお店が多く、
ほんのちょっとしたものからしっかりお腹にたまるものまで、
自分の気分で自由に選べるのだ。


だからホテルの朝食はつけない。
多種多様な選択肢が町の中にあるって言うのに、
どうしてホテルのつまらない朝食が食べられようか。


朝ご飯


旅の朝はとにかく散歩から始めたい。
早朝から移動でもなければ、
まずは町の市場をのぞく。
歩いて、歩いて、お腹が空いたら朝ご飯。


貴州省の田舎には、
こんな砂鍋面(日本で言うなら土鍋麺)という定番もあって、
紅酸湯というトマトの発酵汁を使った麺も良いし、

朝ご飯


冒頭の写真の餅は、

朝ご飯


これは実は甘くない。
いかにもあんこが入っていそうだが、
中身は塩気のある豆餡。

ネギなんかも入ってて、
あんこ入りだと思うと調子が狂うけど、
これはこれで美味しい立派な一品。


買い付けがうまくいくと、
嬉しくなって夜に酒を飲みすぎる。

時には頭が痛いまま散歩をすることもある。


貴州省のある町で定宿にしているところの、
道路を挟んだ向かいに、
豆乳と油条の専門店がある。
朝しかやっていなくて、
その二つを頼んで3元。
60円ほどなのである。


朝ご飯


飲みすぎた翌朝はこれに限る。

今まで何度お世話になっただろうか。


朝、挽きたての豆乳に、
その場で揚げてくれるアッツアツの油条。

豆乳は砂糖も入っていないので、
卓上の砂糖をお好みで。


そんな贅沢を60円で。
なんともありがたい店だが、
物価が上がり続けるこの国でこの商売は成り立つのだろうか?
といつも勝手に心配になっていた。


コロナ前、最後の訪中となった、
2020年の一月。

いつものように重い頭でそこに向かうと、
その店は無くなっていた。


そうだよね。
そうだよねえ。