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スリランカのカード



素焼きと呼吸とヨーグルト



うちで扱っている、
沖縄の焼き締めの作り手である古村其飯さんの、
呼吸する甕(発酵甕)はヨーグルトを作るのにも良い。


なんなら、うちで売っているものよりも、
もっと低い温度帯(土が赤っぽいぐらい)の方がヨーグルトには向いている。



あ。
それって。


話はスリランカに飛ぶ。


スリランカは工芸は乏しいが、
食が豊かで、自然が豊かで、
行けるチャンスがあればいつでも行きたい国。


2018年の秋。
台湾を経由してスリランカを訪れた。
(主な目的はスリランカのヌワラエリヤの茶畑を見に行くことだった。)


夜到着の便だったし、翌日早々に移動開始だったので、
コロンボまでは出ず、
空港からほど近いネゴンボに宿を取った。


朝、歩いてマーケットへ向かう。


スリランカのカード



ああ、これこれ。
旅に来たって感じがする。


ふと、茶色いものが目に止まった。


スリランカのカード

スリランカのカード

スリランカのカード


素焼きの土鍋だ。


インドのチャイカップといえば、
それが目に浮かぶ人も多いだろうか。

あれも素焼き。


釉薬を欠けず、
さほど高い温度でもない。


水は漏らないが、
長持ちはしない。

そんなぐらいの焼き物。


スリランカでは昔からカレー作りなどに使われてきた。
(最も今は別の鍋で作って、見せる用にこの土鍋を使ったりもするのだが)


スリランカのカード


スリランカのカード




スリランカの素焼きで、
今も日常に欠かせず使われているといえば、


スリランカのヨーグルト「カード」のためのうつわだ。


田舎道を走っていると、
素焼きの器が積まれた店を見ることがある。
それだ。


スリランカのカード


スリランカのカード



小さいうつわから大きいうつわまであるが、
小さいうつわなら一人でぺろっと食べられる。


スリランカのカード


スリランカのカード


キトゥルハニーという、
椰子から取れる蜜をたっぷりかけて。


いわゆるヨーグルトよりもこの素焼きのうつわのおかげで
水分がよく抜けていて、
ちょっと硬めで、それがまた食べやすい。
酸が強めなのでこのキトゥルハニーとの相性が抜群。


作り方も実に簡単なもので、
空のうつわに、水牛の乳とカードのタネ(残りのカード)を入れ、
放置しておくとこのヨーグルトが出来上がる。

製造も保存も常温。

作りきり、売り切り。



うつわのフチに当たっている部分がよく水分が抜けていて、
真ん中の方はそれよりも水分が残っているから、
フチとかはより硬めになる。


素焼きの焼き物の効果を実感できる食べ物。


呼吸する甕(発酵甕)は販売用のものは焼き締め。
焼き締めているので呼吸はするが、ガッチリ土が締まっている。

それに対し、
焼成の温度帯がもう少し低いものは、
そこまで焼き閉まらず、
より呼吸し、水分を吸う。


古村さんの焼き物では、
そっちを素焼きと読んでいる。

素焼きの呼吸する甕(発酵甕)と、焼き締めのそれとは、
結構個性が異なっていて、
素焼き(よりオレンジ色)のものはちょっと上級者向けだ。
(呼吸が早く、発酵の進度が早かったりとか。)



ちなみにスリランカのこれは、
インドのチャイカップ同様に、
一度使ったら捨ててしまう。


水分を吸ってしまったうつわは、
再度ヨーグルトを作るのに適さないからだ。





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