新潟県三条市の包丁工房「タダフサ」をみんげい おくむらが訪問しました。伝統産地の確かな技術と今の生活にぴたりと合う道具の話。



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800種の包丁の中には無い、パン切り包丁が産まれた。
包丁工房タダフサ


タダフサが今までに作ってきた包丁は800種以上。

包丁工房タダフサ


家庭用のみならず、漁師のためのものなど専門的なものも色々あります。
しかし、面白いことにパン切り包丁はなかったと言います。


頑にそれを作ってこなかったわけではなく、
ただ、それを自分達が作る、という発想や出会いが無かっただけなのではないか。

包丁工房タダフサ



かつて民藝の器はコーヒーカップと出会いました。

それまでの生活様式に無かったコーヒーカップが我々の国の、伝統の窯元から作り出され、
それらは今では生活に欠かせない道具の一つになり、またそれを作る窯元達の
欠く事のできない定番の品でもあります。


タダフサとパン切り包丁の出会いはもしかするとこんな出会いの再来なのかもしれません。


工房で話を聞いていて面白かったのは、
今回、包丁工房のシリーズのパン切り包丁が、
普通の形をしていないことです。

普通、パン切り包丁といえば全体が
「波形」になっているもの。

なぜタダフサはそれを普通に作らなかったのか。


彼らがパン切り包丁を作る上で、
なぜ波が必要なのかを考えた結果、
それはただの「きっかけ」であれば
良いということがわかりました。

そうであれば、刃先を波形にして、
手元は普通の形で良いのではないか。

その方が切れやすいのではないか。

包丁工房タダフサ

そんな風にしてこの形状が作られたそうですが、それは奇をてらったものではありません。


実際にパンを切ってもらえればその意味がわかると思います。

角食や山食など、いわゆる食パンで試すと一目瞭然。

きっかけを使って刃が入っていくと、あとはすらりと滑らかに刃が滑ります。
包丁とパンが一緒になってぐらぐらするようなことがありません。


タダフサの技術と、日本人のパンの生活がきちんとつながった道具に仕上がりました。

包丁工房タダフサ


先のコーヒーカップの話ではありませんが、
日本で飲むコーヒーは、ヨーロッパのティーカップセットのようなもので供されるよりも、
日本の窯元で作られた素朴なコーヒーカップの方がどこか暮らし馴染みが良いような気がします。


この包丁も、どこか我々日本人の生活に馴染む顔をしているように見えてきます。




新潟の伝統産地で生み出された新しい道具は、このように、寡黙な職人達の技術と、
どこまでも現代の家庭の暮らしを突き詰めた、働き者で美しいものなのです。(完)




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