やちむん(沖縄の焼物)が出来るまでを当店取り扱いのまさひろ工房(陶工仲村まさひろ)の工房を例に説明しています。



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やちむんができるまで


やちむんが出来るまで(やちむんの作り方)



やちむん(沖縄の焼物)、と言われるものが多極化しています。
特に上焼(じょうやち・釉薬を掛ける焼き物)においては、
何をもって、どこまでやちむんなのか、が見えにくくなっているこの時代、
うちはできるだけ地元の素材や伝統のやり方でやちむんを作る、
この三工房とお付き合いをしています。


・読谷山焼 北窯(宮城正享・松田共司・松田米司)
・照屋窯(照屋佳信)
・いずみ窯 島袋工房(島袋貴寿&萌美)


このうち、
北窯と照屋窯は登り窯による焼成でうつわを作っています。
ここではうつわ作りの大まかな流れと、
登り窯による窯焚きの方法について
説明していきます。



やちむんを作る土



やちむん(上焼(じょうやち)と呼ばれる釉薬陶器)のベースになる粘土(陶土)は、
主に沖縄の北部で取れます。

一種類で良ければもちろんそれが良いのでしょうが、土にも個性があり、
なかなか一種類では焼きものになりません。それぞれの個性を組み合わせ、
焼物に向いた土を作っていきます。ここも陶工それぞれの経験や力の見せ所です。



沖縄の粘土は鉄分を多く含む赤土です。焼くと黒っぽくなるのが特徴で、
これに白土をベースに作った白化粧土を掛け、白っぽい焼物を作るのです。
(やちむんを見ると、皿の裏、マカイの高台なんかは赤茶色い土が見えますね。これがベースの土。)


もともと白土が多ければ、白土で焼物を作れば良いのだけど、
これが少ないので、白土はあくまで仕上に。
昨今この白土が沖縄全体で少なくなり、陶工の間でも大きな問題になっています。
まったりと柔らかい表情の白土。これからどうなるでしょうか。



土は見つけたら終わりではありません。
もちろん、それをまず窯場まで運びます。規模は窯によりますが、良いものが見つかれば数トン運ぶことも。

土を運び、まずは乾かします。
そして水を張ったプールのようなところに入れ、かき混ぜ、待ち、浮いてきたゴミや不純物を取り除きます。
それを漉して水を抜き、いっぱいになったら土を移します。水分を蒸発させ、ようやく粘土らしくなります。
その作業を繰り返し、溜まったら、今度は工房内に持って行き、いよいよ、陶土を揉み、
空気を抜き、柔らかさや粘りを出してようやくろくろに乗せることができます。

やちむんの釉薬



やちむんの釉薬(ゆうやく・うわぐすり)



焼物が色んな色になるのは釉薬のおかげです。
絵の具のように簡単に道具屋から買えてしまう時代ですが、
昔ながらのやちむんさー(やちむんの作り手)は天然素材を使って手作りします。


簡単に言うと、それらのベースになるものは、地元の稲藁や籾を灰にしたものや、
ガジュマル(沖縄の樹木)の灰、鉱物のマンガン(これは拾うことができる!)、
など、天然の素材、鉱物、土などを独自に混ぜたものです。





やちむん作りの燃料(薪)



沖縄で、薪窯を焚く時、
燃料と言われれば、琉球松の薪。
しかし、琉球松は年々減り、白土同様これも確保が難しい。

松以外の薪を試したり、皆試行錯誤しているが、登り窯を続けるなら、
薪の確保は絶対条件である。
(薪の確保が難しいのは全国的に同じで、これが薪窯をやれない理由の一つでもある。)


やちむんの薪
(一回の窯焚きで数トンの薪を使う。これも県内各地から集める。良質の薪を常に各所のやちむんさーが探している。)



やちむん いよいよ作陶



土、釉薬、薪、それらの準備を並行し、
窯焚きの段取りを徐々に整えながら、ようやく具体的なものづくりに入ります。



ろくろを挽いて成形、乾燥。化粧土を掛ける。

ろくろ
(照屋窯にて。照屋家の娘、息子。二人の参画によって大きく若返り、窯焚きのペースも早まった。)



ろくろ
(同じく照屋窯にて。うつわを干している風景。右は原土だけ、まだ釉掛け前のもの。白っぽいものは釉薬が掛かっている。)



また乾燥させて透明釉を掛ける。
また乾燥して最後に絵付けをする。


乾燥はタイミングが命だし、全ての工程が窯焚きから逆算して考えられていく。

一回の窯焚きで小さな窯で1000ほど、大きければ数千から万に近い焼物が入る。
膨大な作業。




やちむんの窯焚き



こうした準備された焼物が、いよいよ窯に入る。
1000以上の焼物を窯に詰める、というのもなかなか大変だが、
窯の火の通りのクセなどを考慮して、どこに何を詰めるかも陶工の経験と勘。

例えば北窯では、
焚き口と呼ばれる登り窯の正面の部分を20時間ほど焚き、
窯全体を温めていく。

窯焚き


窯焚き
(焚き口は、原木のような太い薪を入れ、ゆっくりゆっくりと進めていく。各部屋の窯焚きの時は細かく切った薪になる。)



その後、それぞれの部屋(房)を両側から焚いていく。
それぞれ、3時間から5時間前後。
温度が上がりにくい時にはそれが7時間ほどにもなったりする。


窯焚き


北窯で言えば、
部屋数が13部屋なので、
窯焚きはトータルで4日がかりとなる。

窯焚き




こうして焼かれたものを、窯焚き後4、5日そのまま冷まし、いよいよ窯出し、となります。


沖縄のやちむん
(友人である料理人と、北窯松田共司工房の窯出しを見学に。一回の窯出しでこれだけの量。)



窯から出された色とりどりのやちむんが工房に並ぶ姿は壮観です。


登り窯は火が直接当たる窯焚きです。
火の力で、時には焼物が歪んだり、窯の土が降ってきて付着したり、
電気やガスの窯とは全く違った表情があります。


そうしたものも全て登り窯の焼物の面白さだと思い、
当店では歪みのあるものも、そういった「ふりもの」の付いたものも販売しています。




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