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中国貴州省

2013年 中国 貴州省 少数民族の手仕事を求める旅3



侗族(トン族)と言うと、思い出されるのが映画「山の郵便配達」。
あれは湖南省で貴州省の話ではないのだけれど、
山岳地帯の穏やかな民を想像する。

トン族自体は実は貴州省が最も人口が多く、中国に暮らすトン族の60%以上が貴州省に住んでいるそう。


ここでは訪れた、三宝千戸ー大利ー肇兴ー堂安ー纪堂などのトン族の村からその暮らしを紹介します。


三宝千戸というエリアは榕江から車ですぐ。最も行きやすい場所なのですが、
それ故、観光地化されており、かなり残念な感じです。
通り道であれば通っても良いかと思いますがわざわざ訪れるべき村ではない。


中国貴州省

これはトン族伝統の鼓楼(ころう)。祭や集落の集まりに使われる場で、元来釘を使わず、
木のみで作られる素晴らしい建築物。
この集落のものはかなり大きいですが、観光地っぽい雰囲気であまりありがたみがありません。


しかしこの村でも、伝統的な木綿の布に藍染めを施し、それを叩いて艶を出す、そんな作業は見ることができます。


中国貴州省


織り機もありますが、今は生地は買って来ることがほとんどであまり使われていません。
染め、川で洗い、干す。そして叩く。その繰り返し。
なめらかにし、豚の脂を塗り込んでツヤを出す。
そうして民族衣装のベースになる生地が出来上がります。



また、この村のある家では訪れた時にちょうど米焼酎を作っていました。
この辺りでは自家製の焼酎を作る家は多く、この家でも飲ませてもらいましまたが、
まだ蒸留したてで温度の高いものでしたが、独特の甘みのある香りと焼酎らしい喉越し。
なかなか良いものです。


中国貴州省



榕江からは同じくそう遠くない大利の集落でもトン族の暮らしを垣間見ることができます。

中国貴州省


こちらは伝統家屋が多く、また山間のひっそりとした雰囲気でなかなか赴きある集落です。




肇兴ー堂安ー纪堂 侗族(トン族)の伝統的な集落や人。



トン族の暮らしを見る、というと必ずと言って良いほど名前があがってくる肇兴(Zhaoxing)。


中国貴州省

集落の裏側(山側)から見た肇兴の風景。


肇兴からそれぞれ違った方向ですが、近くにある堂安(Tang'an)や纪堂(Jitang)も
同じくトン族の村ですが、のんびりと穏やかなトン族の姿が見られます。

こちら2つは山道であること、
また村に大型の車両が止められるスペースが無いことから比較的のんびりとしており、お勧めです。



さて、トン族の集落。
トン族はミャオ族と違い、山の上で暮らす、というよりは平地側を好むようです。
必ず全ての集落にある訳ではないですが、上で紹介した鼓楼と、風雨橋(屋根付きの橋)が大きな特徴です。

中国貴州省

これは肇兴の一番奥の鼓楼。風雨橋が隣接し、鼓楼の前は広場になっています。
そこでは豚がさばかれたり、夕方からは近くの人が集まって大宴会があったり、
子供達が遊んだり。良い空間です。


中国貴州省


上の写真、上段は纪堂の集落。ここは小さいのですが、のんびり、のんびりとして良い雰囲気。
中段、下段は堂安。下段は堂安の入り口から肇兴を見下ろしています。肉眼では奥の方に肇兴が見えます。
中段、堂安の集落。ここは鼓楼の下で賭け事をするおっちゃん達が楽しそうで。
鼓楼がコミュニティの中で大切なスペースであることがうかがえます。



それぞれの集落ではこんな人達を見かけます。どれも日常のほんと一コマ。


中国貴州省
中国貴州省


集落を歩いていると、ご飯をしている家なら「ご飯食べたの?食べていきなよ!」と誘ってもらったり、
カメラを向けても嫌な顔をする人がほとんどいない。

鼓楼や風雨橋の下の椅子はそのまま現地の将棋みたいなものができるように、目が彫られていて、
お年寄りや大人の男達の社交場。やっている本人達よりも周りがうるさくて。それが面白い。

物質的に豊かではない、と言われる地域ですが、穏やかな心を持った素敵な人達だとすぐにわかり、
ふらふらと歩いているのがとても楽しい。


肇兴 観光と伝統の狭間で。



肇兴(Zhaoxing)は今、貴州省のトン族の伝統の村を巡る観光で最も注目され、
最もその姿を変えつつある集落かもしれません。


事前に下調べしていたこの町とは行き方も(すぐ近くまで高速道路が開通)、
村(いや、もはや町)自体も大変化中(拡大&建て替え&道路整備etc...)。


中国貴州省


本来、5つの鼓楼と、風雨橋(屋根付きの橋)が美しい、
集落の中に川が流れ、その雰囲気が抜群に美しい集落なのですが…。

上の写真、左下は今年に出来た村の入り口で全く最近作られたもの。
その奥の池、池の周囲の建物は今作りかけのホテルやお土産屋さん。
その奥からが本来の集落なのですが…。


中国貴州省


高速道路のおかげで自家用車で漢民族の人たちが村まで来て、こうして観光をしていきます。
しかし集落で新しく出来る建物で商売をするのは漢民族が多く、トン族にお金が回らない、と嘆く声も。
写真右は、今年出来た新しい村の門。失礼な言い方ですが、テーマパーク化しているようで…。


とはいえ、数年前までは肇兴すら、清潔でお湯が出て、wifiが使える宿、
なんて全然なかった訳で、僕はその恩恵に預かりながら旅が出来たので、
何とも言えぬ部分もあるのは正直なところですが。



次はこれらの集落で見た、トン族の手仕事をまとめて。



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